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大阪高等裁判所 昭和31年(ラ)241号 決定 1956年11月29日

抗告人 山川輝雄(仮名)

主文

原審判を取消す。

本件を神戸家庭裁判所龍野支部に差戻す。

理由

本件抗告の要旨は、「抗告人が原裁判所に対し、同町内に同姓同名の居住者があり、不便であることを理由として、その名「輝雄」を「秀和」に変更することの許可を求めたところ、原審判は、「秀和」を「ひでかず」と読むことは離読であるとの理由の下に、抗告人の申立を却下したが、右の如き呼称は、社会常識上難読とはいい難いから、原審判を取消し、右改名許可の決定を求るため、本件抗告に及んだ次第である。」というにある。

よつて、本件記録について審査するに、抗告人居住の○○市○○○○には、抗告人と同姓同名の者居住し、抗告人は昭和六年生れであるのに対し、他方は大正五年生であつて、両者年令の差は相当あるが、近距離に居住していることが認められ、また抗告人の改名を求むる名「秀和」はさほど難読であるとは思われないから、もし右の如き同姓同名のものがあるため、郵便物の誤配があつたり、税金関係、選挙の投票等の面で両者混同され、社会生活上著しい不便、不自由があるのであれば、改名を許可すべき正当の事由存するものというべく、原審判が専ら抗告人の改名を求める名の難読に重点をおいてその申立を却下したのは失当たるを免れない。

よつて、原審判を取消し、さらに右改名の正当事由の存否についての審理を経るため本件を原裁判所に差戻すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 吉村正道 判事 金田宇佐夫 判事 鈴木敏夫)

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